もののけ姫のこだまは森にすむ木の精霊

もののけ姫のこだまは、シシ神の森にすむ精霊です。白く小さな体で頭を動かすとカラカラと鳴り、物語の始まりから最後の場面まで、森の命の移り変わりを映し出します。

こだまは木霊と書く森の精

こだまは漢字で「木霊」と書き、豊かな森にすむ精霊の一種です。制作当時のスタジオジブリの日誌では、カタカナで「コダマ」と書かれていました。

体は白、または淡い緑色で、暗い森や夜には淡く光ります。半透明になったり姿を消したりでき、人の言葉は話しません。

豊かな森にすむ精霊なので、こだまの数は森の元気さを測る目印として見ると分かりやすくなります。大勢のこだまが出てくる場面は、森がまだ生きていることを示すとも読み取れます。

アシタカを森の奥へ導くこだま

こだまがはっきり姿を見せるのは、アシタカが谷川でけが人を助け、シシ神の森を抜けてタタラ場へ向かう場面です。森の端でこだまに出会ったアシタカたちは、案内されるように奥へ進み、池の岸で金色の光に包まれたシシ神を目にします。

アシタカは「ここにもコダマがいる」と話しており、故郷の村の近くの森にもこだまがいたのでしょう。けが人を背負うアシタカのまねをしたり、迷ったアシタカを導いたりする姿から、人を敵とは見ていないことがうかがえます。

作中でこだまが出てくる主な場面を、順番に並べると次のとおりです。

アシタカを森の奥へ導くこだまの表

表が画面に収まらないときは、左右にスクロールできます。キーボードでは表を選び、左右の矢印キーで動かせます。

アシタカを森の奥へ導くこだまの表
場面こだまの様子
森の端アシタカたちの前に現れる
森の中アシタカを森の奥へ導く
シシ神の池案内した先でシシ神が姿を見せる
シシ神の最期黒い体液に命を吸われて落ちる
最後の場面若木の横で1体が頭を振る

首を振るとカラカラと鳴る音

こだまは頭を動かすと、カラカラという乾いた音を鳴らします。作中では甲六が、こだまを見て「こいつらはシシ神を呼ぶんだ」とおびえています。

音を作ったのは効果音の担当者です。スタジオジブリの制作日誌には、1997年1月20日に効果の伊藤さんが来社し、ヤックルやコダマ、タタラ、石火矢などの音を宮崎駿監督に聞いてもらったと書かれています。

どんな素材で音を作ったかは、公式の資料に書かれていません。そのため、楽器の音やカエルの声だという話は、確かな話ではなく考察として受け止めるのが安心です。

シシ神の最期とラストの1体

物語の終盤、首を失ったシシ神から黒い体液があふれ出し、木々とともに多くのこだまが命を吸われて落ちていきます。こだまが次々に消える場面は、森そのものが死んでいく様子とも見られます。

アシタカとサンが首を返すと、シシ神は朝日を浴びて倒れ、吹き抜けた風で枯れた山にわずかに緑が戻りました。映画は、倒れた大木の上に芽生えた若木の横に1体のこだまが現れ、頭を振ってカラカラと鳴らす場面で終わります。

こだまが豊かな森のしるしであることを踏まえると、最後の1体は森がもう一度育ち始めたことを示す場面と読み取れます。悲しい結末のなかに小さな希望を残す終わり方です。

トトロ説と屋久島の森の関係

「こだまはやがてトトロになる」という話は、監督やスタッフが話したと紹介されることもありますが、元の発言は確かめられません。確かな設定ではなく、ひとつの説として楽しむのがよいでしょう。

一方、屋久島とのつながりは公式の記録に残っています。制作日誌によると、1995年5月に宮崎監督や美術スタッフなど総勢16名が5泊6日で屋久島を訪れ、白谷雲水峡や照葉樹林帯を歩き、縄文杉にも向かいました。

屋久島観光協会は、白谷雲水峡の「苔むす森」を、有名なアニメ映画のモデルになったと言われる場所として紹介しています。九州森林管理局によると、人気の太鼓岩まで往復するコースは約4時間かかるので、訪ねるなら歩きやすい靴と時間の余裕を用意しておきましょう。

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アシタカとサンは森と人の間に立つ二人

アシタカとサンは、人間と森の神々の争いに巻き込まれながら、その間に立とうとする二人です。呪いを受けた東の若者と山犬に育てられた娘が出会い、結末ではそれぞれの場所で生きる道を選びます。

アシタカはエミシの村の若者

アシタカは物語の主人公で、北の果てにあるエミシ一族の村に暮らす17歳の青年です。一族の長になるための教育を受けた若者で、弓の腕にすぐれ、相棒のヤックルに乗って旅をします。

村の老巫女ヒイさまは、呪いを受けたアシタカを占い、西の地で不吉なことが起きていると告げました。アシタカは掟に従って見送りなしで村を出ますが、村娘のカヤだけは掟を破って見送り、小刀を手渡しています。

侍でも貴族でもない若者を主人公にしたことが、この作品の大きな特徴です。宮崎監督も2016年の講演で「侍でもなく、貴族でもない主人公を描きたい」と語ったと報じられています。

右腕に残ったタタリ神の呪い

アシタカの右腕には、村を襲ったタタリ神を倒したときに受けた死の呪いが、赤黒いあざとして残っています。あざは強い力を与える一方で、少しずつ広がって命を奪っていくものでした。

タタリ神の正体は、鉛のつぶてを撃ち込まれ、人への憎しみで姿を変えた猪神のナゴの守です。アシタカは呪いを断つ手がかりを求めて、猪神がやって来た西の地へ旅立ちました。

呪いは、武器を持って人と争おうとしたときや、タタリ神が恨む相手が近くにいるときに暴れ出します。最後にシシ神の風を浴びると、右腕にわずかな傷あとを残して、あざは消えました。

サンは山犬に育てられた娘

サンは題名の「もののけ姫」と呼ばれる15歳の娘で、山犬の神モロの君に育てられました。モロの君によると、森を荒らした人間が、牙から逃れるために投げてよこした赤ん坊だったといいます。

顔には赤い入れ墨があり、戦うときは赤い土の面と山犬の毛皮をかぶります。森を荒らす人間を深く憎み、タタラ場を率いるエボシ御前の命を何度も狙いました。

自分を山犬だと思い込んでいたサンは、アシタカに「美しい」と言われて心を揺さぶられました。名前の由来は、宮崎監督が1980年に考えた企画案のヒロイン「三の姫」だと伝えられています。

二人が結末で選んだそれぞれの道

結末でサンは、アシタカは好きだが人間を許すことはできないと答えます。アシタカは、サンは森で自分はタタラ場で暮らし、ともに生きようと語り、二人はそれぞれの場所で生きることを選びました。

作中でアシタカは、深い傷を負って倒れながら、サンに「生きろ」と語りかけます。同じ言葉「生きろ。」は、映画のキャッチコピーにもなりました。報道によると、プロデューサーの鈴木敏夫さんとコピーライターの糸井重里さんの手紙のやり取りから生まれたコピーです。

どちらかが勝って終わる結末ではないため、見る人によって受け取り方が分かれるでしょう。二人の答えは、森と人がどう折り合うかという問いを、見る人に手渡す形になっています。

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エボシ御前とタタラ場の人々

エボシ御前は、鉄を作る村タタラ場を率いる女性です。森を切り開く敵役でありながら、行き場のない人々に居場所と仕事を与えた長としても描かれ、タタラ場には彼女を慕う人々が暮らしています。

エボシ御前はタタラ場を率いる女性

エボシ御前は、山のふもとで鉄を作るタタラ場の女棟梁です。山の木を切って燃やし、川の砂鉄から鉄を作り、石火矢と呼ばれる火器で森の神々や鉄を狙う侍たちから村を守っています。

冒頭でアシタカの村を襲ったナゴの守に鉛のつぶてを撃ち込んだのは、このエボシでした。終盤ではシシ神の首を撃ち落とし、モロの君に右腕を食いちぎられます。

一方で、売られた娘たちを買い取ってタタラ場で働かせるなど、村人にとっては生きる希望をくれる長でもあります。森から見れば敵、村から見れば恩人という二つの顔が、この作品を単純な善悪の話にしていません。

トキや甲六などタタラ場で働く人々

タタラ場では、男たちが牛で米や鉄を運び、女たちが足で踏むふいごのタタラを踏んで、砂鉄を溶かす火を絶やさないようにしています。女たちのまとめ役が番子頭のトキで、夫の甲六は牛飼いの一人です。

甲六は、山犬に襲われて谷へ落ち、川の中でアシタカに助けられました。気の強いトキにいつも言い負かされる、明るくて少しドジな男です。

エボシのそばに仕えるのが、大柄な側近のゴンザです。アシタカを間者と疑ってかかる短気な一面もありますが、エボシを守ることには真剣で、トキに言い負かされる場面もあります。

エボシが守った病の人々の描かれ方

タタラ場の奥には、エボシが引き取って世話をしている病の人々が暮らしています。包帯姿で描かれた人々で、新しい石火矢づくりを任されていました。

宮崎監督は2016年の講演で、「実際にハンセン病らしき人を描きました」と語ったと報じられています。「業病」と呼ばれた病を患いながら、それでもちゃんと生きようとした人々を描かなければならないと思った、という趣旨の言葉です。

監督は制作中、自宅近くの療養所・多磨全生園にたびたび足を運んでいたと伝えられ、2019年1月27日には国立ハンセン病資料館で講演しました。その講演では、侍と百姓だけの時代劇が取りこぼした人を描こうとしたとも語っており、背景を知ってから見直すと、この場面の重みが伝わりやすくなります。

ジコ坊はシシ神の首を狙う僧

ジコ坊は、旅の途中のアシタカにシシ神の森の存在を教えた小太りの僧です。正体は謎の組織「師匠連」の一員で、朝廷の許しを得て、不老不死の力があるとされるシシ神の首を狙っています。

配下の唐傘連や、雇った狩人のジバシリを動かし、エボシにシシ神殺しへの協力を取りつけました。飄々とした話しぶりの裏で、目的のためなら手段を選ばない人物です。

序盤に命拾いした恩からアシタカを手助けする場面もあり、敵役ながら憎めません。首を奪って逃げようとしたところをアシタカとサンに止められ、映画の最後のせりふ「バカには勝てん」を口にします。

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モロの君とシシ神など森の神々

シシ神の森には、こだまのほかにも人の言葉を話す山犬や猪の神々がすみ、森を荒らす人間と戦っています。中心にいるのが、サンを育てた山犬のモロの君と、命を与えも奪いもするシシ神です。

モロの君はサンを育てた山犬の神

モロの君は、二本の尾を持つ白く巨大な山犬の神です。300歳の雌とされ、2頭の息子の山犬とともに、人間に捨てられたサンを娘として育てました。

森を侵すエボシを憎み、石火矢の傷で体が弱っても命を狙い続けます。一方でサンには、アシタカとともに生きる道もあると諭しており、厳しさと母親らしい優しさをあわせ持っています。

最期は、タタリ神になりかけた乙事主からサンを取り返してアシタカに託し、首だけになってもエボシの右腕を食いちぎりました。猪の神の乙事主とは、昔恋仲だったという設定も伝えられています。

乙事主とナゴの守は猪の神

乙事主は、4本の牙を持つ白く巨大な猪の神で、500歳の最長老です。一族のナゴの守の死を知り、鎮西と呼ばれた九州から猪の神々を率いて海を渡ってきました。

目はもう見えませんが、鼻と勘が鋭く、人間の偵察を見抜きます。人間との戦いで一族は乙事主を残して全滅し、自身もタタリ神になりかけたところで、シシ神に命を吸い取られました。

ナゴの守は、冒頭でアシタカの村を襲ったタタリ神の正体です。もとは猪の神々を束ねる主でしたが、エボシの石火矢で深い傷を負い、死への恐怖と人間への憎しみから呪いの姿に変わりました。二頭の最期は、憎しみが神さえ化け物に変えてしまう怖さを伝えています。

シシ神は昼と夜で姿が変わる神

シシ神は、命を与えたり奪ったりする森の神です。昼は木の枝のような角を持つ、人のような顔の鹿の姿で水面を歩き、足もとでは草花が一気に育っては枯れていきます。

夜になると、半透明の体を持つ十数メートルの巨人ディダラボッチに姿を変え、体の中から青い光を放ちながら森を歩きます。人の言葉は話さず、首には不老不死の力があると信じられていました。

シシ神は、石火矢で撃たれたアシタカの傷を治しましたが、腕のあざは消しませんでした。生き物の願いどおりには動かない神として描かれている点が、シシ神の不思議さを強めています。森には、木を植えて森を取り戻そうとする猿の神の猩々もすんでいます。

ヤックルはアシタカが乗るアカシシ

ヤックルは、アシタカが旅に連れて行く「アカシシ」と呼ばれる大カモシカです。赤茶色の体毛と大きな角を持ち、今はもういない架空の動物という設定になっています。

人の言葉は話しませんが、アシタカの相棒として最初から最後まで行動をともにします。終盤には侍の矢で足を傷つけられますが、シシ神の風を浴びて傷が治りました。

ヤックルの音も、こだまと同じく効果音の担当者が作り、1997年1月に宮崎監督が確認しています。乗り物ではなく仲間として描かれているので、アシタカの人柄を映す存在として見るのもおすすめです。

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もののけ姫の登場人物と声優の一覧

もののけ姫の主な登場人物は、エミシの村とタタラ場と師匠連の人間、そしてシシ神の森の神々に分かれます。立場と声の担当を表で見比べられるほか、1997年の公開から平成のテレビ放送までの記録も年表でたどれます。

人間の登場人物と声優の一覧

人間の登場人物は、アシタカの故郷の人々、タタラ場で暮らす人々、シシ神の首を狙う師匠連の三つのグループです。

人間の登場人物と声優の一覧の表

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人間の登場人物と声優の一覧の表
名前立場声
アシタカエミシの村の若者松田洋治
ヒイさまエミシの村の老巫女森光子
サン山犬に育てられた娘石田ゆり子
エボシ御前タタラ場の長田中裕子
ゴンザエボシの側近上條恒彦
トキタタラ場の番子頭島本須美
甲六トキの夫の牛飼い西村雅彦
牛飼い牛飼いたちの親方名古屋章
ジコ坊師匠連の僧小林薫

役名と声の組み合わせは、映画.comの記事(2023年7月21日)に載っているものです。スタジオジブリ公式サイトの作品ページは出演者の名前だけを載せています。甲六役の西村雅彦さんの今の芸名は、西村まさ彦です。

森の神々ともののけの一覧

森の神々は、人の言葉を話す山犬・猪の神と、言葉を話さないシシ神・こだま・ヤックルに分かれます。

森の神々ともののけの一覧の表

表が画面に収まらないときは、左右にスクロールできます。キーボードでは表を選び、左右の矢印キーで動かせます。

森の神々ともののけの一覧の表
名前姿声
モロの君二本の尾の白い山犬美輪明宏
山犬モロの息子の2頭渡辺哲
乙事主4本の牙の白い猪森繁久彌
タタリ神呪いの姿のナゴの守佐藤允
シシ神昼は鹿・夜は巨人せりふなし
こだま白く小さな森の精せりふなし
ヤックル赤茶色の大カモシカせりふなし

乙事主の声を担当した森繁久彌さんが出演したスタジオジブリ作品は、もののけ姫だけです。スタジオジブリの制作日誌には、1997年4月1日に美輪明宏さんと小林薫さん、4月3日に森繁久彌さんの声の収録があったと書かれています。

1997年公開の記録と平成の放送

もののけ姫は1997年7月12日に公開された、宮崎駿監督の原作・脚本による約133分の作品です。日本映画製作者連盟の記録では、1997年の配給収入は117億6000万円で、この年の邦画で1位でした。

1997年公開の記録と平成の放送の表

表が画面に収まらないときは、左右にスクロールできます。キーボードでは表を選び、左右の矢印キーで動かせます。

1997年公開の記録と平成の放送の表
時期出来事
1995年5月屋久島で森を取材
1997年7月12日東宝の配給で公開
1997年8月末邦画の記録を更新
1999年1月22日金曜ロードショーで初放送
2020年6月26日全国372館で再上映
2025年10月24日IMAXで期間限定の上映

スタジオジブリによると、もののけ姫は「E.T.」を抜き、それまで日本で公開された映画の記録を塗り替えました。テレビ初放送の視聴率は、ビデオリサーチの関東地区の調べで35.1%です。報道によると公開時の興行収入は193億円で、2020年の再上映分を加えた累計は、2020年12月の時点で201億8000万円でした。

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まとめ

もののけ姫のこだまは、豊かな森にすむ木霊という精霊で、カラカラという音とともに森の命の移り変わりを映し出します。最後に若木の横に現れる1体は、森がもう一度育ち始めたことを示す小さな希望です。

アシタカとサン、エボシ御前、モロの君たちは、それぞれの立場から森と人の争いに向き合いました。次に見直すときは、こだまの数と登場人物の表を手がかりに、森の様子と人物の選んだ道を追ってみてください。平成のほかのヒット映画は平成の映画一覧でたどれます。

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参考資料

個別の品やサービスの発売時期は、各図鑑ページで項目ごとに出典を示します。

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